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酒米を切り口に日本酒を楽しむ

すっかり時が経過してしまいましたが、先日、食のショールームパルズさんで開催された<青森県の新しい酒米「華さやか」をテーマに青森県の酒蔵5蔵が集結した試飲会>に参加してきました。

同じ産地、同じ品種の酒米を使用した日本酒の飲み比べの体験は初めてでしたが、酒の味わいの違いをいろいろな観点から知りたい我が身としてはこの上ない企画です。

華さやかの特徴は、なんといってもすっきりとした味わい。各酒蔵の日本酒それぞれの個性や酒質設計の狙いなどについて、蔵元や杜氏さんたちにお話を伺いながら試飲できて、腹オチ具合も相当です。

このような「華さやか」の特性を生かして、白ワインのような日本酒、樽熟成の日本酒、低アルコールの日本酒、リキュール風の日本酒等々、既存の日本酒ファンだけでなく、今まであまり日本酒を飲まなかった方にも楽しんでもらえそうな様々なタイプの日本酒を試飲させていただくことができたのは、取り組みを体感するという意味でも良い体験でした。

近年は地元の米を使って日本酒づくりを行う酒蔵が続々と増えているようですが、そのようななかで「華さやか」という酒米は、地酒としての個性をわかりやすく発信できる酒米と言えそうです。

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■酒造りには地元のお米

---------------------------------------酒蔵は、もともと全国的にみて、原料となる酒米の産地を地元にこだわることなく酒造りをすることが多かったようですが、近年は地元で作られた米を使用する酒蔵が続々と増えていると聞きます。県内の酒蔵が地元の米を使用して個性豊かな酒造りをすることは、地域を発信するうえでとても良いことだと思いますし、今回のように複数の酒蔵が集まって面での取り組みとなると、発信力も増して、とても意義のあることだと思います。(僕のなかには「華さやか」は完全にインプットされました。)

さて、当然ながら酒米にも適地適作があり、地域の気象や土壌の条件によって向き不向きの品種があります。

例えば、青森にはもともと「華吹雪」という品種が県内の純米酒で使用されていましたが、高精米に向かないため、新たに山田錦と交配して高精米ができる「華想い」という品種が開発されました。しかし、この「華想い」は、寒さや病気に対する耐性が強くないため、気象・土壌条件の良い地域限定で作付けされているにとどまっています。

---------------------------------------■山田錦と交配するワケ

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ちなみに、なぜ山田錦と交配させるのでしょうか。

一般的に、米の胚芽や外層部にはタンパク質、脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれますが、これらは麹菌や酵母の生育を急進させるので、酒質のバランスを崩し、着色や雑味のもとにもなります。

そのため、酒造りに際しては入念に精米をする必要があります。

コメを磨くほど良質のお酒ができることも知られていますが、精米の途中で米が砕けると上述のように外層部のタンパク質や脂肪などの成分が残ってしまったり、サイズが不均一でその後の工程に悪影響がでてきてしまうのです。

そして、精米で砕けにくい米とはすなわち、米粒が丸く大きいこと、さらに、米粒の中の心白という部分が大きいこと、これらの条件を満たすのが山田錦というわけです。

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■高精米にしたいワケ

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米には炭水化物の他にたんぱく質や脂肪、マグネシウムなどの灰分も含まれているため、たんぱく質や脂肪が多すぎるお米では良いお酒はできません。いわゆる雑味が出やすくなり、すっきりとした酒になりにくいのです。

そこで、高精米にすることによって、たんぱく質や脂肪などを減らし、米粒の中心部にあるでんぷん質の割合を高めるのです。このでんぷん質は麹菌により作り出される糖化酵素で糖分になり、さらに、酵母の働きで糖分がアルコールになります。だから、でんぷん質を良い状態で残すことが大切なのです。

高精米にすることで、よりすっきり綺麗な味わいのお酒になる、というわけです。

そういうキレイなお酒造りを目指す酒蔵が多いのは、もっと言えば、消費者がそのようなキレイなお酒を求めているということなのでしょう。

---------------------------------------■「華さやか」の登場

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「華さやか」は、プログルテンという難分解性のタンパク質を含んだ品種であるということが発見されたことで、注目が集まりました。

通常、米に含まれるタンパク質は醸造中にアミノ酸に分解されますが、そのアミノ酸が多いと出来上がった日本酒の雑味を作り出すいわれています。そのため日本各地でアミノ酸の少ない醸造方法が研究されているそうです。

しかし、華さやかに含まれるプログルテンというタンパク質は難分解性のため、アミノ酸の少ない日本酒が作りやすくなるのです。その結果、雑味の少ないすっきりとした味わいの日本酒を作ることにつながるというわけです。

青森県の産業技術センターのサイトをみてみると、「華さやか」の玄米は、心白の発現率(心白が発生している粒の割合)と心白率(1粒に占める心白の割合)が低く、小さい心白の割合が多い、とありますが、それでもキレイな酒造りのためには、「華想い」よりも分があるいうことなのでしょう。

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■「華さやか」の未来

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このような「華さやか」の特性を生かして、白ワインのような日本酒、樽熟成の日本酒、低アルコールの日本酒、リキュール風の日本酒等々、日本酒ファンの皆様だけでなく日本酒が苦手な皆様にも愛される様々なタイプの日本酒づくりに地元酒蔵が面で取り組んで行くということは、当然ながら発信力を増します。消費者の側からも非常にわかりやすく、今回のようなイベントがあると、消費者に取り組み自体を体感してもらうことができるので、非常に効果的です。

酒蔵同士が肩を組んで地域を発信していくことが、酒米だけでなく日本酒業界の未来を明るいものにしていくのだろうなと感じたイベントでした。

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